<質問>
虚数自体は,「人がつくりだした数」ですよね。その人工的な数が,自然界や宇宙の法則を解く重要な役割を果たしていることに驚かされます。今後,「第2の虚数」のように,人がさらに新しい数をつくりだす可能性もあるのでしょうか?
千葉県柏市,S.A.さん
10月24日質問受付
<回答>
 まさに,そのような「新しい数」をつくりだした数学者がいます。アイルランド生まれの数学者・物理学者,ウィリアム・ローワン・ハミルトン(1805〜1865)です。
 実数の世界は「数直線」,つまり「1次元の世界」に対応します。これに対して,実数に虚数を加えた複素数の世界は「複素平面」,つまり2次元の世界に対応します。ならば,「3次元の世界」,つまり空間の世界に対応するような新しい数の世界があってもいいはずだ。そう考えた人物がハミルトンなのです。
 ハミルトンは,複素数に「第2の虚数」を加えて,1個の実数と2個の虚数からなる新しい数の世界(三元数)を確立しようとしました。しかし,10年以上の歳月を費やしましたが,うまくいきませんでした。ところがあるとき,三元数にさらに「第3の虚数」を加えれば,四則演算の可能な新しい数の世界ができることにハミルトンは気づきました。
 こうして生まれたのが,1個の実数と3個の虚数からなる新しい数,「四元数」です。ハミルトンにちなんで「ハミルトン数」とよばれることもあります。
 四元数がもつ3個の虚数はそれぞれi,j,kの記号であらわされます。iとjとkは,いずれも2乗すればマイナス1になる虚数であり,さらに「i×j×k=−1」という規則がなりたちます。
 ただし,実数や複素数のかけ算では交換法則(A×B=B×A)がなりたちますが,四元数ではなりたちません(A×B≠B×A)。また,すべての方程式が必ず解をもつためには複素数があれば十分であり(代数の基本定理),四元数をもちだす必要はありません。しかし,一方で四元数は,素粒子物理学の一分野や,人工衛星の姿勢制御技術などに応用されています
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